元々は自身の娘さんの就活の為に書かれたが、ひょんなことから出版する事になった本で、娘宛ての文章なので、所々に親の愛情が感じられる。
マーケターとして長年培った知識と経験をもとに"企業に自分を売り込む"事に対しての的確なアドバイスが、ごもっともな内容で面白かった。
表題の「苦しかったときの話」では、想像を絶するような逆境と苦労の内容で、それを乗り越えて来たから、この人はこんなに凄いのかと納得した。努力の天才である。
学生には本当に読んでほしいし、子どもを持つ親にも本質を理解する為にオススメしたい。
ざっくりと内容のまとめ
そもそも人間は平等ではなく、遺伝である程度の能力は決まっている。持って生まれたものを最大限に活かすには、己の特徴の理解、長所を磨く努力、そして環境選びが必要である。
資本主義社会とは、サラリーマンを働かせ、資本家が設ける構造であり、両者の生涯年収は桁数がいくつも違う。日本の教育システムは大量の優秀なサラリーマンを生産するように作られており、肝心なキャリアやお金の教育が行われていない。
損するのは嫌という心理だけで思考停止し、株式などの投資に非常に億劫な人が多い。
就活では、まず己を知る事から始める。100個ぐらいの好きな行動の動詞を付箋に書いて、自分の職能を判断する。「考える力」「コミュニケーション力」「リーダシップ力」どれに偏っているか確認し、向いている職業を判断する。
企業の選び方は今の大企業ではなく、将来の大企業を。安泰を求めるのではなく、自身の職能が成長できる仕事を選ぶ。収入は業界毎でほぼ決まっているので、期待値の上下を知った上で情熱を持てる好きな仕事を選ぶ。成功→お金なのでその逆は決して無い。
面接では伝え方ではなく内容重視で、自分の強みを他の学生とは違った切り口で、強烈なインパクト、印象付けをさせる必要がある。もちろん、強みや経歴にエビデンスが必要なので、日々の努力が必要なのは言うまでもない。
人間は生き延びなければならないという本能から、本質は自己保存。選ばなくて良いように、決断しなくて済むように、不安やストレスがないように、痛くないように、変化が少ないように、安全なように、楽なように行動する。これらは人としての成長を止めてしまう。楽と苦の選択肢があれば苦を選ばないと成長は無い。
クラゲのような受動的に生きる人生を送り、会社の外で通用するスキルを身につけずに、便利に使われている人で世の中は溢れていて、その人たちはリスクを取っていないつもりが、日に日に大きなリスクを背負っている事に気がついていない。
自身のブランド化が非常に重要で、3つの職能を手に入れれば100万人に1人の人材になる。著者は「ストラテジスト」「マーケター」「組織ビルダー」の職能を磨く為に、リスクを取ってP&GからUSJへ転職し、最終的に刀という会社を設立し、独立した。
苦しかったときの話の章では、電話恐怖症や血尿など、極限まで追い詰められた話が書かれていた、とにかく著者は超ストイック。
結果を残す優秀なプロになるには、その道で努力を積み重ねる事が出来た人であり、その正体は努力できる好きな事を見つけられた、発見の成功者であると言っている。